は集中すると周りが見えなくなるタイプの人間のようだ
額に汗して黙々と剣を振り続けている



sunshine




炎天下のギーザ砂漠に何時から居たのか

的にしていた木が倒れると同時に膝をついて座り込む
ムゥとした顔でこちらを向いた


「近くで見られるより恥ずかしいのだけど」

「気が付いていたか」

「何となくです」

ゆっくり立ち上がったに持ってきた水を渡したバッシュ

「あまり根を詰めない方がいいぞ」

「今日はこれくらいにしておきます」

場所を空け渡すためにその場を離れ
向っていくのはさっきバッシュが立っていた場所

仕返し、だと言わんばかりに彼女は視線を向けてくる

「見ていても仕方ないぞ」

「動じないって事は分かっています」



見ているのもすぐに飽きるだろうと思い自分も鍛錬を始めた


そんな真剣なバッシュを見て、ため息を漏らしてしまう

本当に動じない事ではなく
一太刀、剣を下ろすだけで様になってしまう姿に

ただ素直にもっと見てみたいと思い
邪魔をしないようにこっそり別の場所に移動した






集中していたバッシュがそれに気付く訳も無くふとの居た方向に目線をやると
彼女の姿がないことに集中力が散漫になり剣を休めた

「何処に行ったんだ」

もしかしたら帰ったのかも知れないと思ったが
使っていた剣は置いたままだ

何かあったのかと不安になり辺りを見回すが見つからない

探さなくてはと歩き出した直後、
彼女の声は空から聞こえた



「何かあったの?」

振り返ると切立った丘の上に
平然とこちらを見るの姿

「帰るのかと思った」

「君を探そうとしていた処だ」

「え、ここに居るのに?」

「急にいなくなるから心配したぞ」

バッシュは優しいから誰にでもするだろうけど
真剣な顔で言われ何だかとても嬉しかった

「迷子になるつもりはなかったの、ごめんなさい」

「今日はこれで戻る事にしないか」

「ですね、帰りましょう」




そう言うなり彼女は体を構え、まさかと思った時には遅かった。

は戸惑う事なくいきなりその場所から飛び降りて来たのだから

無我夢中で手を伸ばし抱きとめると
頬を赤くしたが怒鳴る

「危ないじゃないバッシュ!」

「それはこっちのセリフだろう」

「受け止める方がどうかしてる」

「怪我はしてないか」

「こんな状況でする訳無いじゃない」

その答えにバッシュは鼻で笑い
は口元を手で隠して恥ずかしさを隠している


「ところで何をしていたんだ」

「何って、あなたを見ていたの」

「ならばあの場所で事足りるだろう」

「それが無理だったから」

どこに行こうと見えるものでは無いのは確かだが
見下ろせばもしかしたらと、

「あなたの事もっと見えたらな、って・・・」

ははは、、、と乾いた笑いで誤魔化し馬鹿な発言に呆れていないかと
目線を上げるとバッシュに顔を背けられてしまった

「どうしたの?」

「−・・・・熱に当てられたようだ」

「え、日射病かしら」

これだけ近くに太陽を感じればそうなっても仕方がない

「陰る事が無いからだろう」

空を見上げず、の顔を見たままそう口にした。

昼は輝くような光、そして夜は淡く闇を照らす灯―
当の本人はそれに気付いてはいない様だが。